泣き言 in ライトノベル

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青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない

個人的な感情に過ぎませんが、鴨志田一はずっと幸福な物語を描く作家だと思っていました。
多少の困難や立ちはだかる壁があったとしても決して読者を物語の谷底に突き落とすような作家ではない。そう思っていました。
悪い言い方をすれば、そういった展開を書くことができない作家だと思っていたのかもしれません。以前、鴨志田一は書けば書くほど良くなる、これまで書いてきたことをこれから書くことに生かせる作家だということを書いた覚えがあります。
だから、別段、幸せばかりを書いてきた鴨志田一が学習して鬱屈とした物語を書けないわけではないともどこかで思っていました。ですが、これほど辛く、苦しく、重い展開を書いてくるなど誰が予想していたでしょうか?
この巻の構成は極めてシンプルです。三角関係、牧之原翔子に対するある程度の決着です。つまるところ牧之原翔子はどんな存在であり、咲太はどちらを選ぶのかということになります。敢えて言いましょう、チープであると。五巻で既に結論は出ているはずなのにまたもや蒸し返す。当然のごとく結果は真っ当でそれでも物語としても収まりのよい形で着地しようとします。ですが、その先で大口を開けた穴が待っていた、というだけで。
一巻から張り巡らされていた伏線がたったひとつの事実により解きほぐされいく流れはまさに圧巻の一言です。
この、胸が張り裂けそうになる、辛く、苦しくけれど、美しい青春をどうか、味わっていただきたい。

ノシ