泣き言 in ライトノベル

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塔京ソウルウィザーズという物語が教えてくれること

こういう、傑作を埋もれさせてしまうのは、非常にもったいない

塔京ソウルウィザーズというライトノベルは第19回電撃小説大賞を受賞して、発売されたなぜか、一巻以降続きが描かれることのない物語である

取り敢えず、このライトノベルの続きが絶望視されている(少なくとも自分はしている)理由となっている騒動のまとめを簡潔に

1:ネット世代の雑評論(個人ブログ)

2:NAVERまとめ

まぁ、要するに売れる見込みがないから皆買ってね? という宣伝である

さて、じゃあスタートということで

塔京ソウルウィザーズ (電撃文庫)

塔京ソウルウィザーズ (電撃文庫)

 

 

 

塔京ソウルウィザーズの世界観を一言で説明することは非常に難しい

これをSFだという人もいれば、ファンタジーだという人もいるだろう

箒に跨り、魔導書を携え、動物霊を従えるファンタジー世界でありながら、仮想人格、プログラミング、OSなどSFテイストとした香りが漂ってくる……そんな複雑な世界観がこの作品の魅力だ

世界成立としては大神災と呼ばれる霊災で壊滅したもののソウルエネルギーと呼ばれる未知のパワーを手に入れるプログラムで作られた異次元空間をソウルエネルギーによって実体化し、魔術国家を建築

12の魔術国家が集まり、黄道十二宮を冠した魔法学術機関「時計塔学園」を設立、神との接触により、人類の救済するという悲願のために魔術師が塔を積み上げる

というわけだ

この塔京で繰り広げられる物語が、雄弁に語りかけてくるのは、「生きること」の意味である

主人公である黒乃一将は魔術師の名家に生を賜りながら、自らの責により放逐されており、一人で生活している

いや、一人でと言ってしまえば誤解が生じるだろう

正確には一人「一匹」である

その一匹こそが不死の魔狼であるブリュンヒルデ

彼女こそが一将が家から放逐の憂き目に遭うことの原因となった動物霊だ

たとえば、具体的な統計データはないが、おおよそ人類のほとんどは経験するであろう出来事は数多く存在するだろうが、その中の一つに死別というイベントは間違いなく存在するだろう

恋人、親、子供、兄弟あるいは、ペット

長い時間をともに過ごしたいわばパートナーといってもいい存在を失った時の喪失感は大きだろうし、決して消化できるものとは限らない

そういうときに葬式という儀式は、あるいは弔うという気持ちはその悲しみを紛らわせてくれるだろう

そのような合理的行動も受け入れられない人物だっている

一将もその一人だった

死んでしまったペットを自らの魂を融合させ、自らの守護霊とした

それが彼の罪である

生きていれば、誰だってなんだって死ぬ

抗うことのできない絶対的に普遍で不変の法則だ

言い換えれば、死んだものを生き返らせるなんて完全にどうしようもない、生者の自己満足で、死者に対して……精一杯生きた死者に対する侮蔑にしかならないのだ

そんな彼が塔を積み上げて頂まで上りつめる物語

もっと読んでいたかったというのが、つまるところの本音である

ノシ