泣き言 in ライトノベル

ライトノベルの感想を真面目に不真面目に書きなぐるサイト

RINGADAWN-灰色狼と妖精姫-

なんだかんだおすすめしておきながら感想を書いていなかった作品

本作品はファンタジー小説である

これはRINGADAWN、言わば御伽噺シリーズにおいて一貫して描かれているテーマである

昨今のファンタジー小説は剣と魔法、エルフ、ゴブリン、インプ、ドラゴンなどなどある種、固定観念として語られていることが多い

しかし、これは剣はある。されど、魔法はない。エルフなどの特殊な種族が存在するわけでもない

血の匂いが漂い、策謀と知略が渦巻き、ただ骸を積み上げて進む、極めてリアリスティックな物語だ

だが、敢えて言おう

本作品はファンタジー小説である

では、この作品におけるファンタジー(幻想)とはなんだろうか

それは登場人物の願いである

人の夢と書いて儚いと読むようにファンタジーも幻を想うものだ

誰に言ったとしても一笑されてしまう幼きときの夢をキャラクターが追い求め足掻くのだ

一般的なファンタジー小説のように現実を超えることはできない

極めて現実的な世界で生きて、なおかつ夢を果たさなければならない

現実で生きる人々がずっと大事にしまいこんできた夢を叶える

これが幻想でなくてなんなのだろうか!

魔法もない、エルフもドワーフもいない

されど胸を張ろう。本作品はファンタジー小説である

さて、表題の通り、主人公は灰色狼と妖精姫だ

狼は本来騎士だった。姫を守るために使える騎士だ

されど影に飲み込まれ、狼となる

妖精は弱者ではない

騎士を失い、それでも諦めることなく戦いを挑む強者である

実に格好つけた言い方だ

狼たるレイジ・クォルトリーズは一般的な主人公とは大きく異なる

髪は黒と白が斑に伸び、一山いくらという娼婦街の女と一夜をともにする、口は悪く話せば飛び出すのは皮肉だらけ

けれど、幼き日に交わした約束を従順に果たそうとする

姫たるシグリエル・リム・ロントもまた一般的なそれとは異なる

誰かに守られている姫ではない、何もできずただ笑っているだけの姫でもない、国を覆い潰す巨大な陰謀に立ち向かいたった一人の侍女に全てを託す大馬鹿者だ

けれど、幼き日に受け取った期待に応えようと絶えず歩みを進めている

いい貴族になる

彼と彼女が交わした約束はそれだ

たったそれだけだ

たったそれだけ

つまるところ、この物語は子供の夢を大人になって叶えようとする不器用な二人の戦いの物語のほんの一部である

できることならば、この本を一読し彼と彼女の戦いに少しばかり拍手を送っていただけるならばここまで文を尽くした甲斐があるというものだろう

ノシ