泣き言 in ライトノベル

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86-エイティシックス-

超没入型ハイセンスギャグバトルアクション。

流石ホワイト様は言うことが違いますわ。

豚に人権を与えぬことを非道と謗られた国家はない。

故に、言葉の違う誰かを、色の違う誰かを、祖先の違う誰かを人の形の豚と定義したならば、その者達への抑圧も迫害も虐殺も、人倫を損なう非道ではない。

(ヴラディレーナ・ミリーゼ『回顧録』)

 鮮烈な冒頭から始まる物語。有人機に豚を乗せて、無人機と言い張るセンスは一生身につかないぜ……。ぶっちゃけ、最初らへんは読むのが辛かった。差別の匂いがどうしても辛い。いや、こういう言い方だと正鵠を射ていないから、言い直すけれど、偽善者としての面がどうしても見えてしまって、それが腹立たしいことこの上ない。

よく、アスキーアートでカンガルーのボクシングをやっていて、争いは――というものがあるけれど、まさにその通り。彼らはクズと同じレベルに落ないために戦い続けたのだ。

それは時期によっては高潔などと名付けられるべきものなのかもしれない。けれど、それは違う。抑圧と差別と偏狭と悪逆と下劣によって磨かれたダイヤモンド。研磨剤の汚れが移り、路傍の石にも劣るゴミ以下の何かにしか“見えない”者達。

この物語の最大のカタルシスはそんなゴミ以下の、この物語の言葉を借りるならば豚のそこに秘められた価値を、主人公の目を通して、自分だけが理解しているとそういう錯覚に陥らせてくれることだ。

ぶっちゃけ、滅茶苦茶感情移入する。この国本当にロクでもないなとか、ありったけの言葉をぶつけて、作中の老婦人の言葉を借りるなら『地獄に堕ちろ、このクズども』ってことでしょう。もっとも、死ねだのファックだの、セックスとかそういう言葉を日常的に使っている俺が、そういうことを言ったところでありふれた日常の1コマに過ぎないんだろうけれど、それでも、言いたくなる。つまるところ、俺は、この場合は読者? としては公正かつ高潔な人間でいたいわけだ。なぜなら、そういう人間であるからこそ、その言葉が生きてくるのだから。

さて、残酷な機構に飲み込まれていく彼らを、読者は眺めていくことしかできない。主人公と同じだ。

おいていかないで

読者としてはこの瞬間に主人公への感情移入であったり、物語への没入感は最大化されるのだろう。そこにあるのは膨大な喪失感だけ。

おいていかないで

きっと、そこには読者であろうと主人公であろうと同じである。

さて、既にこれを読了している諸兄らには言うまでもないだろうが、一応、追記しておこう。

 豚に人権を与えぬことを、非道と謗られた国家はない。

 故に、言葉の違う誰かを、色の違う誰かを、祖先の違う誰かを人の形の豚と定義したならば、その者達への抑圧も迫害も虐殺も、人倫を損なう非道ではない。

 

 誰かがそれを正しいと考え、誰もがそれをよしとしたその時、サンマグノリア共和国の滅亡は始まり、同時にその時に終わっていた。

(ヴラディレーナ・ミリーゼ『回顧録』)

ノシ

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