泣き言 in ライトノベル

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なぜ、いまさらこれなのか、そう思う方もいるでしょう。

しかし名作とはいついかなるときでも色褪せぬものなのです。唐辺葉介はやはり神、その1秒を1.1秒で刻むが如く、狂いっぷりがにじみ出るテキストはまさしく至高の一品……いや、俺ごときが偉そうに語れることじゃないんだけど、それでも言わせてくれ……唐辺葉介はいいぞ。

唐辺葉介は元エロゲライターで瀬戸口廉也という名前をつかってシナリオを書いていたのだが、そのどれもが傑作と名高い評価を受けている。俺も一目惚れだった(むしろ一読惚れというべきか?)それくらい素晴らしいライターなのだ。

本書の主人公、ヒロインはアンナ・メアリー症候群という奇病に感染している。その二人にスポットライトを当てた恋愛ものというべきか? 二人はおしなべて不幸である。真っ当に、いや、幸運であれば幸福に生きることができた人間ではないだろうか? それは世間一般で語られるところの幸福であり、二人が認識するところの幸福とはちょっと違うのかもしれない。

この物語は輝かしい二人が泥にまみれながらも努力を続け、バッドエンドに近い展開を超えたハッピーエンドを掴む話ではない。むしろ漂流を続けた結果のこの到着点であるとさえ言える。いたずらな運命に流され続けた二人が最後にたどり着いた場所、それを見届けてほしいのだ。