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泣き言 in ライトノベル

ライトノベルの感想を真面目に不真面目に書きなぐるサイト

冴えない枕の勧めかた

ss(二次創作)

 枕営業。それは業界の闇である。古くは芸能界、広告業だったり番組のエロ……偉いおっさんが大女優を目指す少女たちに「ふふふ、ヒットしたいならわかっているよね?」と体の関係を要求したことに端を発する、エロ同人の定番でもある。いや、詳しくは知らないけどね。

 

  その波はアニメ業界にもあるようで、○○が△△に体を売ったとか、ビッチだとかクソだとかファンを裏切ったとかネットでは盛んな議論が行われている。女性声優が処女であるとか声豚の中ではかなり重要なファクターであると言ってもいい。

 そして、有名な作家や企業がコミケに参戦するようになり枕の波は同人業界にまで広がっている。「あの作家さんを紹介してほしければ、わかっているね?」とか「うちで売り子やりたいなら、わかっているね?」みたいにいや、それむしろ遠回りだろと思わざるを得ないような要求が藁にも縋る思いで受け入れてしまう少女が後を絶たないとかなんとか。いずれにせよ、作家や女優、声優の本当の力を見ることなく、あろうことか体を売る、売らせるなんていう枕営業はくそだ。割れや、違法動画視聴にも並ぶ大罪だ。そんな罪を許さない正義のプロデューサーに俺はなりたい。

「で、それがどうしてこの状況に繋がっているのかな?」

 だが、そんなプライドは今は必要ない!

 俺、安芸倫也は土下座していた。同じサークル『blessing software』に所属しているメインヒロイン担当兼スクリプト担当加藤恵に対して。

「済まん、加藤。サークルの発展の為には仕方が――」

「なくはないよね」

 仰る通りです。

 俺は今加藤に対して、かつて詩羽先輩が言ったように

「ふふふ、メインヒロインになりたいならわかっているよね?」

 と体の関係を迫っているのだった。

 四月に加藤に出会い、加藤をメインヒロインにした同人ゲー(全年齢対象)を作ろうとメンバーを集めた。しかし、集まったメンバーは美少女ばかり。しかも作品に対しては真摯な態度で向き合う真のクリエイターばかりであった。

「ふーん、安芸くんの認識ってその程度だったんだ。英梨々も詩羽先輩も氷堂さんもなんだか報われないね」

「あ、済まん、口に出してた。――じゃなくてだな、加藤」

 加藤がなにを言っているか、わからない。繰り返す。加藤がなにを言っているか、わからない。

「うん、知ってるし、わかってる。ようするに安芸くんはプロデューサー権限を使って、一応のメインヒロイン担当であるところのわたしに体の関係を迫っているんだよね?」

 そうやって土下座している俺を椅子に座りながら見下ろす加藤の目や表情、声は怖いぐらいにフラットで、あれ、加藤がフラットなときってこんな感じだっけとむしろ心配になるくらいである。

「お願いします、メインヒロイン様」

 もはや、プロデューサーのごり押しによる枕営業とかそんなものはなくなっていた。いつの間にか立場が逆転していた。……いや、最初からこうだったけれど!

「今の安芸くんがダサいとかなりふり構っていないとか、そういう男の子としてどうなのかなーって思っちゃうような情けなさは一旦置いておいて――」

「置いておかないでください。ごめんなさい」

 加藤のフラットな声でそんなことをネチネチ言われると精神にかなりくる。きつい。

「置いておいて……安芸くん、今がいつだかわかってるよね?」

「締切……前です」

 そう、現在我らがサークル『blessing software』の華々しいデビューとなる冬コミの締切に迫りつつある、大事な大事な時期である。

「そう。それなのになんでサークルの代表である安芸くんはわたしに体の関係を迫っているのかな?」

「……溜まってるんや」

「うわ……」

 俺の正直な告白に加藤さんドン引きである。顔色を確認してみるとフラットを通り越して死んだ目をしている。死んだ魚の腐った目である。ゴミを見る目だ。

「お願いだ、この通り!」

 もう一度頭を打ち付けて、懇願する。

「……どうしてわたしなのかなぁ?」

「いや、だって土下座したらヤラせてくれそう」

「どうして、そういうこと素直に言っちゃうかなぁ」

「それはこっちがお願いしているんだ。真摯な想いを口にしないと相手に失礼だ」

「女の子に体の関係を要求することは失礼じゃないんだ……」

「いやー、だってそこは、ほら、加藤だし」

「えー、そこをわたしだからで、片づけるのはどうかな?」

 くそ、加藤のガードが堅い。加藤のくせに! いや、そりゃ流石に当然だけど……

「ほら、俺誠司だし、主人公だし。そうだろ、恵、いや、巡璃!」

「わたし恵だし、そもそもあのゲーム自体も一応全年齢版だし」

 俺の真摯な願いも加藤は拒絶する。

「そもそも、単に体の関係だけならわたしなんかより霞ヶ丘先輩とかの方がよくない? ……難易度も向こうの方が低そうだし」

「違う! 俺が体だけの関係を望んでいると思ったら大間違いだ! 俺はお前がいいんだ!」

「うわー、全然かっこいい台詞に聞こえないや」

「というわけで加藤、お願いだ! やらせてくれ!」

冬コミが近いから今はちょっと」

「お前、その台詞完全に狙ってただろ!?」