読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

泣き言 in ライトノベル

ライトノベルの感想を真面目に不真面目に書きなぐるサイト

冴えない彼女の育てかた egoistic lily~please apology~8

egoistic lily~please apology~ 冴えない彼女の育てかた ss(二次創作)

「相変わらず、ここのケーキは美味しいな」

「そうだね、あの時は安芸くんのおかしなペースにドン引きしたけどね」

「あの時は正直、どうかしていた気もする」

「あはは、何それ」

 俺たちはお昼のちょっとした休憩にスイーツバイキングに来ていた。あの時は一人で来れるような場所でなくて、加藤と一緒で初めてこれた場所。そしてあのあとも一人で来るにはどうしても尻込みしてしまうような場所だ。

 あの時みたいにケーキをがっついたりはせず、落ち着いた雰囲気で味わって楽しんでいたと思う。

「うーん、午後からはどこを回っていくか」

「安芸くん、今日はあんまり食べないんだね。まだ三つ目だよ?」

 加藤が俺のフォークの先を自然と目で追っていた。そのまま欠片は俺の口の中へ。

「加藤がドン引きしてたからな、流石に自重するよ」

「あれは割と見ていて楽しかったよ?」

「俺は気にするようになったんだよ。男としての成長だ」

 そうして俺が三つ目、加藤が二つ目のケーキを食べ終わると自然と立ち上がって、歩き出していた。……加藤の動きが随分と機敏になっていたけど、あいつも成長したなあ。なんかこう、オタクっぽさが。

 その後、『ルル・ビアンカ』とか『バーニング・ロス』だとか『フォルテシモ』、『トゥルーブルー』、『セルロース』、『ストラスブール』などなど、二年前にも聞いたような名前をぽんぽんあげる加藤を先導していき、あとポツポツと閉め始める店が出てくるまで十分に楽しんだ。

「ねえ、安芸くん、最後にいきたい店があるんだけど、いいかな?」

 それは加藤のワガママ。やれやれ系主人公が流されてしまう、ある意味では仕方がないイベント。メインヒロインの可愛さにころっとやられてしまって、言うことを聞いてしまう、そんなイベント。

 でも、それを受けるわけにはいかない。楽しいイベントはあっさりと流して、ここからは俺の精神を抉りまくる展開だ。全方面に対する謝罪だ。だって、俺のメインヒロインはもう加藤恵じゃないから。

「ごめん、加藤。そこには行けない」

 お前が行こうとしているところはっきりとわかるよ。アイオーンだろ?

 眼鏡にフレームを買って、帽子を買ってもらってそうして楽しい楽しい買い物が楽しいままで終わるだろ?

 だけど、俺はそれを選んじゃいけないんだ。もし、選んでしまったら俺はきっと加藤恵に甘えてしまう。キャラが立ってなくて、フラットな表情で何事も受け流して、サークルのために一生懸命頑張ってくれて――そして、ふとしたときに頭が揺さぶられるくらい可愛いところを見せるヒロインに、惚れてしまう。

 ここで、楽な方に逃げてしまえば、先輩を裏切った意味がなくなる。

「そんな大したことじゃないってば、ちょっとだけお礼がしたいだけだよ」

 二年前の再現なんて、ちょっとしたことじゃない。なあ、加藤。こんなどちらかを選ばせるようなことをしたお前が悪いんだぞ?

 それでも、英梨々は切り捨てられなかったのか? 大切な親友だから見捨てられなかったのか?

 それとも、今なら英梨々さえも出し抜ける自信があったのか?

「お前、前に言ってたよな。メインヒロインを使い捨てるのかって? そうだよ、メインヒロインなんて使い捨てだ。どんなに優れた感動するシナリオを作っても攻略が終われば、またユーザーは違うヒロインを攻略しようとする。それを止めるなんて、できやしないんだ」

「……中々最低なこと言ってるし、微妙に話がずれてるよ?」

「ずれてないよ、加藤。一応、先に謝っておく。ごめん、もうお前とは一緒にゲームを作ることはできない」

 一瞬だけ、加藤はフラットな表情を見せるが、すぐさま悲しそうな表情に。

「…………私たちのサークルはどうするの?」

「解散する」

 加藤はふと天井を見上げていた。六天場モールの高い高い天井のその先を。まるで別の何かに話しかけるみたいに。

「ねえ、安芸くん」

「なんだ、加藤」

「私がどうしても、安芸くんと英梨々と霞ヶ丘先輩とでもう一度ゲームを作りたいって言っても駄目かなあ?」

「……本当にごめん」

 加藤には俺を怒る資格がある。俺には謝ることしかできやしない。

「じゃあ、最後に一つだけ」

 その言葉に心がまた揺れる。最後という言葉が僅かに残っていた未練を引きずり出す。

「きちんと英梨々と仲直りするんだよ?」

「……ああ、わかった。約束する」

 そうして、二本目のフラグを俺はへし折った。

 

 

「ねえ、安芸くん。別に私は倫也くんの一番になろうとしたわけじゃないの。私か霞ヶ丘先輩かを選ばせたら、両方選んでくれるって、そして、英梨々とも一緒にまたゲームを作れるって思ったんだよ。……なのにどうしてこうなっちゃうのかな」

第九話 第七話